さっきの患者さんの入院が決まって、一応今日の診察を終わると、あれから1時間が過ぎていた。
「上野先生呼び出してすみません、奥さん今一番大変な時なのに…」
「全然大丈夫、呼び出しは医者につきものだからね」
控えめな笑顔を見せた看護士と別れて、さっき陽を送った部屋に行くと、落ち着いた陽がいて。
「あ、先生すみません。陽大丈夫?」
「港…」
「大分落ち着いたようですよ、お腹の赤ちゃんも元気に動いてるみたいですし」
「そうですか、よかったぁ…」
「ふふ、旦那さんも奥さんの前では医者よりパパの顔なのね」
そんな先生の言葉に、陽は顔を綻ばせた。
「陽帰ろ、家」
「うん……、じゃあ…ありがとうございました」
「いいえ。
陽さん、我慢しちゃ……ダメですよ。旦那さんにいっぱい構ってもらって」
ポンポンと肩を叩いた先生は、微笑んだ。
「…はい、かまって……もらいます」
顔をポッと赤くして、俯いた陽のそんな可愛いリアクションに、俺も笑わざるを得なかった。


