「おじゃましまーす…」
陽を預けていた実家の玄関に上がると、何も声が返ってこなくて。
リビングの戸越しがなぜか騒がしくて。
ドアを開けてみると、毛布にくるまる陽が袋に顔を入れて戻していて…俺の母親に背中をさすってもらっていた。
……あ、今日は預けてよかった
と内心ほっとして。
「あ、お帰り港。」
「…ただいま、陽いつから吐いてんの?」
「えっ……と…30分くらい前かしら」
「…そう」
荷物を下ろしてあたりを見回す。
「…何か飲みもの入れてもいい?」
「…あ、いいわよ、何?港飲むの?」
……。
「俺じゃないよ…陽」
そう言いつつも食器棚の戸を開ける。
「陽ちゃん?でも今吐いてるじゃない」
「何か飲ませた方がいいかも。
…いつもそうやって気分紛らわしてる、陽」
「……
あ、あぁ、そうね。じゃあ今入れるわ」
コップを受け取ってお湯を沸かし始めた母親。