『ない』
そう呟く愛優。
「じゃあ寝室に掛かってる俺の上着のポケットからとってきて。季蛍に薬飲ませてくれる?」
「わかった、飲ませる」
「…あんま焦るなよ。季蛍なら大丈夫だから」
「…でもすごい苦しそ…うだし…」
ガチャンと寝室を開ける音が聞こえて。
「自分で薬持ってなかった季蛍が悪い。薬飲ませて落ち着いたらまた連絡ちょうだい」
「わかった」
電話を切ると、不安そうな高島が俺を見た。
「大丈夫ですか!?季蛍」
「だいじょぶ。発作だから」
「……蒼先生も慣れたもんですね。僕でも未だに焦っちゃいますよ」
「あれは薬持ってない季蛍が悪い。なんで持ってないんだよ…」


