それから薬を飲んだ陽さんは、スヤスヤと寝息をたててしまった。
「……疲れてたみたい」
陽さんを寝かせた部屋から出てきた季蛍は言った。
「……うん」
「…妊娠中って大変だよね」
ぼそりと呟いた季蛍は、俺の向かい側に腰をかけた。
「…なぁ、忘れてんの?」
「……?」
「季蛍も飲む薬あんだろ」
「……ぁ」
「……どさくさに紛れて飲まないつもりだったとか」
そう言って笑うと
「そんなことないもんッ!!本当に忘れてたんだもん」
「じゃあ早く水持ってきて飲んで」
「…わ、わかってる。あとで…」
「…俺に飲ませてほしいの?」
「…ッ!!
ばぁーかぁ!!」
季蛍は不満そうに口を尖らせて、キッチンへ水を取りに行った。


