乾いた髪の毛を綺麗に一つに結わいていると
「あのね」
陽が振り向いて言った。
思わず結わき途中だった髪は離しちゃったんだけど。
「……ん?」
「今日、お腹……赤ちゃん動いたんだよ」
「…そうなの?」
「動いたの、……すごく」
俺のことを見つめて言う陽……よっぽど嬉しかったんだろう。
本当なら、俺も側にいて一緒に『動いたね』って喜びたかったはず。
俺とのはじめての赤ちゃんを
『動いてるね『生きてるね』
って笑いあいたかったはずなのに……。
……陽には我慢ばかりさせてる。
本当なら仕事も休める現状にあるけど、今は離せない患者さんがいて…。しばらくは無理そう。
「……陽、……ごめん」
「ぇ?」
陽は首を傾げて、俺のことを見上げた。
「……ごめんね、休みとれなくて」
「…。
そんなの気にしなくていいのに~、フフ、港にはお仕事してもらわないと困る」
「……でも」
「港、私のこと気にしてくれてるの?大丈夫だよ?私は」
そう言って笑った陽も、‘本当の笑顔’ではなかった。


