帰ってきたばかりのパパは、抱きつくお母さんをズルズルと寝室へ運ぶ。
「手洗ってくるから。動くなよ」
両親医者だと……そこは結構厳しい。
ベッドの上に仰向けに寝かせたお母さんの頭の所にあぐらをかいて座るパパは、
「季蛍。……ほら」
とあぐらの上にお母さんの頭を乗せて。
「……や」
「動かない」
起きあがろうとしたお母さんを制止するパパ。
「……気持ち悪…」
お母さんはパパのあぐらの上で、目を瞑って身体を横にした。
「……吐く?」
「ううん…吐かない…」
「声掠れてる。喉痛いだろ」
「だから痛いって…言ってるじゃ…」
「…愛優ー。そこのテーブルのスプーン取って」
「あ。うん」
「…ありがと」
いいように使われてる気がしなくもない。
……私がここにいるからか。
スプーンを手にしたパパは、お母さんに口を開けろと促す。
「ちょっとでいいから開けて。」
「ううん!どうせ…スプーン入れるんでしょッ」
「ううん。入れない」


