とそのとき。 「たーだいまー」 芙羽の声が玄関から聞こえた。 帰ってきた。………どうしよう。 そんな焦りの気持ちが、私の体を焦らせて 「おかえりー」 と叫んだ直後、急に来たふらつきに体が対応できなくて 「熱いッ…」 また肌に鍋が触れた。 料理の苦手な私の不注意のせいなのだから、芙羽に言えばどうにかなることなのだが、芙羽がキッチンに顔を出して、 「なんかいい匂いする~。……楽しみ」 と言ってまたリビングに消えてしまって、余計言い出せなくなってしまった。