「……んー…ちょっと考え事」









「……季蛍ですか?」










「んー……………」









また手元の資料に目が戻ってしまって、蒼先生は俺の話を聞いていないみたい。








「……蒼先生…どうかしました?」









「………果織ちゃんと…季蛍と…愛優。



……あぁ、まぁ愛優はただ風邪で寝込んでるだけなんだけど」









「果織ちゃん…何かあったんですか?……それに季蛍も」










「果織ちゃん…さ、最近急に家に帰りたいって言うようになって。」











「……家に」











「しばらく説得させて落ち着いてたんだけど、昨日辺りからまた言い出してさ……。



そのせいか微熱もあるし……」










「……」










子供って大変なんだと感じながらも、蒼先生の疲れてる様子はバッチリとわかった。











「……で、季蛍はあれからどうですか?今日も仕事来てるみたいですけど」












「あんね。………言うことほんっとに聞かない。



ちょっと何か言っといてくれる?
俺のことは聞かないから。」









そう言ってため息一つついた蒼先生は、スタスタと医局を出て行ってしまった。