庭の垣根を曲がると、道端に置いてある軽トラに乗るよう言われた。
初めて乗る軽トラの助手席に座り、ドアを閉めると、運転席のノハラが呟いた。

「シートベルト」

怒ってるような言い方に、慌てて締めた。
エンジンをかけ、ラジオを流す。
小さくなっていたボリュームを上げ、ハンドルが切られた。

「道分かんねーから、ナビしろよ」

ぶっきら棒な言い方だけど、ノハラなりの優しさだったんだと思う。

ガタガタと揺れのひどい軽トラのエンジン音とラジオの声は、グスグスという私の鼻音を、いい具合にかき消してくれていたから。


帰る道すがら、ノハラは眠そうに欠伸を繰り返していた。
特に喋るでもなく、黙って私のナビ通りに運転して、家まで送り届けた。

「ありがとう」

着いた頃には涙も止まり、いつも通りの愛想ないお礼を言った。
ノハラは、そんな私の態度を気にする事もなく、トラックを発進させる。

「またな」

短く言って去って行く。
そのバックナンバーを見送りながら、何も言わず、何も聞かずにいてくれた事に感謝した。


時は流れ、

さり気ない気遣いができる年頃になった…。

同級生の思いやりが、

しみじみと心に残った…。