(皆…嘘ついてごめんね……)

厚と別れて一ヶ月以上経っても、私の食欲は、相変わらず戻ってこなかった。
お陰で落ちた体重はそのまま。
少し前のぽっちゃりしていた面影はまるでなく、中学の頃と同じように見えたのもそのせいだった。


同窓会は、幹事を務める平井君の挨拶で始まり、ノハラの音頭で乾杯した後、皆が一斉に校歌を歌い始めた。
小さく口ずさみながら、歌っている皆の顔を眺め、一人、異国に居るような気分に浸っていた。

地元を離れ、厚と付き合いだしてから別れるまでの七年間、私はずっと、この同級生達のことなど考えもしなかった。
二、三年に一度、帰省で砂緒里と会う以外、誰とも会わず、話すらもしてこなかった…。

そんな皆との間には、見えない壁があるように思えて、校歌すらも撥ね退けてしまう。
厚のことで埋め尽くされていた心の中に空いた大きな穴は、その歌声を吸い込んで、すっかりかき消してしまう程だった…。

胸が苦しくなって、歌うのを止めたーー。
お酒を飲む気にもなれず、ぼんやりとしていると、ノハラがビール瓶を持って回って来た。

「お前、さっきから全然飲んでねーだろ」

そう言うと、無理矢理グラスを持たせ注いでくれる。

「あっ!ちょっと!もういいってば!」

グラスの淵スレスレまで注がれて、慌てて口をつけた。
久しぶりに飲んだビールの苦味が、口いっぱいに広がった。

「もっと飲め!そんな遠慮してるから暗いんだよ!ほらほら!」

少しずつ少しずつ、注がれては飲み、注がれては飲みを繰り返しているうちに、頭がボーッとしてきた。

(やば…そう言えば空腹だった…)

久しぶりに飲んだアルコールに、体がついていかなかった。
目の回るような感じがして、グラスをテーブルに置いたら、身体の力が抜けた。

ぱたっ…

畳の上に寝転がった私に気づき、砂緒里が大きな声を出した。

「きゃっ!花穂っ‼︎ 」

身体を揺すっている…。

「大丈夫…ちょっと目が、回っただけだから…」

そう言ったのは記憶にある。
でも、次に目を覚ました時、私は何故か、外にいたーーー。