ジョージは、帰る車の中で、ほとんど無言だった。


シオリは、それを気遣って、いろいろと話題を振るのだが、返ってくるのは「うん」とか「ああ」とかいう、小声で素っ気無い返事。


初めて経験する、ジョージのそういう態度に焦るシオリは、意味も分からず「ごめんね」と謝った。


「何のごめん」


ようやくジョージは、重い口を開いて、シオリに今の感情を吐き出した。


「こっちが真剣なのに“はいはい”なんて言葉、よく言えるね」


声も荒げることなく、一律のトーンで話す様子が、余計にジョージからの苛立ちを感じる。


「…そうだよね。ごめんなさい」


「もういいよ。謝られると惨めになるから」


シオリは、それ以上、何も言えなかった。


車で、たった数キロを走らせる時間が、二人には、とても長く、重かった。


ようやく、待ち合わせ場所だった、事務所の駐車場に帰ってくると、ジョージは、そのまま職場へと戻っていく。


「家、帰らないの? ジョージさん。。」


「帰っても眠れないだろうから仕事するよ。じゃあね」


自分をこれほど想ってくれている人に対して、何気ないひと言で傷つけたこと。


シオリは、ただそれだけを悔いて、ジョージの背中を眺めていた。