友彦とジョージは同じ年で、同じくサーフショップでの繋がりはあるが、直接的にはお互いのことを知らない。


友彦はシオリをその場に置いて、道ばたの少し先で彼女の帰りを待っていた。


「シオリちゃん、あれ、彼氏?」


「そう。今ちょっとケンカしてるけどさ」


「でも元気そうで良かったよ」


ジョージとシオリは、実はこのとき初めてまともに会話らしい会話をした。


シオリの元カレである和志を通じてお互いを知るも、以前は言葉を特に交わさない挨拶程度の仲でしかなかったからだ。


「きみんち、今の俺の住んでるトコと近いんだよ」


「そうなんだ。うちの家知ってるの?」


「ああ、一度、家の前まで行ったことあるしさ」


「うそ!?そーなんだあ」


ジョージはシオリの家を知っていた。以前、和志や仲間たちと一緒に雪山で遊んだ帰りの車中で、「ここが彼女んちだから」と和志から自慢気に紹介されたことがあるからだ。


お互いに何だかもう少し話をしたい素振りではあったが、ジョージは「彼氏に悪いな」と思って、電話番号を交換し、「また連絡するよ」と言って喫茶店のなかに引っ込んだ。


シオリはジョージに向かって小さく手を振ると、友彦のもとに足早にかけより、自ら友彦の腕を組んで歩き去っていった。