2003年の春


世代を問わず常連の集まるサーフショップに、和志は彼女を連れてやってきた。


「こいつさ、俺の言うこと聞かないんだよね」


そう言って笑いながら彼女を紹介する和志。和志の後肩斜めに立つ“その彼女”は、にこやかに笑って照れている。


「可愛い彼女を見つけたな」「和志はロクでもない男だぞ」などと笑いながら、皆が和志と彼女のコトをはやし立てた。


ジョージはこのとき、ソファーに座って雑誌を読みながら、後輩になる和志にだけ向かって目で挨拶し、「お前、良かったじゃん」と祝福した。


和志と彼女の帰り際に、ようやくジョージは二人の後ろ姿をまじまじと見ると、彼氏を立てて一歩下がって歩くような彼女の愛くるしさと、何だかわからないが物悲しさを感じた。