次の日、大阪湾に浮かぶ成人男性の遺体が見つかった。
 警察の調査の結果、杉山 小十郎だとわかった。

 情報が入ってきた百寿は、ため息をつく。

「万桜ちゃんの様子はどうだ?」

 百寿は、南に尋ねる。

「ずっと部屋にこもったままです。
 あれからひとことも話してくれません」

「一の方は?」

「万桜ちゃんをこちらに預けたあと姿をくらませています。
 こちらでも、捜査していますが……
 見つけれていません」

「そうか……」

 百寿は、ゆっくりと立ち上がる。

「どこへ行くのですか?」

「どうとくのじかんだ」

 百寿は、そう言って万桜の部屋に向かった。


 百寿は、万桜の部屋をノックする。
 しかし、返ってきた言葉は……

「帰って!」

「万桜ちゃん。
 小十郎は、死んだよ」

 万桜は、その言葉を聞いた途端部屋のドアが開けた。

「お父さんが?」

「ああ……
 やっぱり万桜ちゃんを助けたのは……」

「うん。
 お父さんだった……
 お父さん私を抱きしめてくれたの。
 あの人、本当に悪い人だったの?」

 百寿は、答えに困った。
 だが、正直に話した。

「ああ。
 悪人だ。人を何人も殺している」

「そう……」

 万桜の表情が曇る。

「だが、最後は親だった」

「え?」

「ヤツは立派な父親だったってことだ」

「……うん」

 万桜は、うつむいた。

「……だが、もしかしたらそんなに悪い人じゃなかったのかもな」

「え?」

 万桜は、顔を上げ百寿の方を見る。

「だって、万桜ちゃん。
 お前を助けたんだからな……
 最後は立派な親父さんだったってことさ」

「うん!」

 万桜の顔は、笑顔にはならなかったが少し明るくなった。
 そして、茂たちのもとに顔を出すようになった。
 小十郎の葬儀は、身内だけでひっそりと行われた。