――翌日

「もーいくつねなくてもー
 おしょうがつー」

 みゆきが、嬉しそうに笑う。
 じいやからお年玉を貰ったからだ。

「そんなにはしゃぐと滑ってコケるぞ?」

 達雄が、そう言ってため息をつく。

「大丈夫だよー
 お正月に雪だよー
 こんな楽しいイベントにはしゃがない小学生はいないよ!」

 みゆきが、そう言って歌い出す。

「雪だるまつくろー
 自転車に乗ろう」

「どうして突然歌う?
 どうして踊る?
 そして、雪の日に自転車にのるのはあまりオススメできないぞ?
 滑るからな」

「……達雄ってテンション下げるの得意だね。
 脱力系男子?」

 みゆきが、そう言ってクスリと笑う。
 すると達雄がため息混じりに言葉を放つ。

「脱力系男子とは、やる気のない男のことをいう。
 みゆきが僕に言っているものとは少し違う」

「そうなの?
 じゃ、一緒に歌える?
 ゆきだるまつくろー」

「だから、なぜ突然歌う?
 僕は、寒いから雪だるまなんて作らないからな!」

 そう言った達雄に雪の塊が襲ってきた。

「雨宮ー
 雪合戦するぞ!」

 柾だった。

「……君は、僕を怒らせたいのか?」

 達雄が、冷たい声で柾を見る。
 すると元気いっぱいの声で柾が答える。

「雪合戦勝負だ!」

「寒いから断る!」

「今からありったけの雪をお前にぶつける!
 だから、お前も全力で俺に雪をぶつけに来い!」

「だから、寒いのは嫌だ!
 茂!お前はさっきから何をしているんだ?」

 達雄はそう言って、静香と雪の塊を集めている茂を指さす。

「雪だるまだよ」

「達雄も雪だるまつくろー」

 茂がそう答えると静香も歌う。

「だから、なぜ歌う?」

「だって流行だもの」

 静香がクスリと笑う。

「誰が何を言っても俺は雪だるまを作らないし雪合戦もしない!」

「これをのっけていい?」

 一が、茂に尋ねる。
 すると茂がうなずく。

「うん。
 いいよー。
 達雄くんがダダをこねている間に雪だるまできちゃったね」

 茂が、そう言うと達雄が怒鳴る。

「だから、僕は寒いのが嫌なんだ!」

「大丈夫よ。
 達雄」

 みゆきが、そう言ってニッコリと笑う。

「何が大丈夫なんだ?」

 達雄が、眉間にしわを寄せる。

「もう、言わせる気?」

「なにをだ?」

 みゆきは、白い息を吐きながら言葉を放つ。

「少しも寒くないわー」

 達雄の頭のなかが真っ白になった。