それからさらに数日後、ゆかりは、大きくなったお腹を撫でながら音楽を聴く。

「どうして、音楽を流しているの?」

 茂が、ゆかりに尋ねる。

「胎教にいいのよ。
 こうするこの子喜ぶの」

「この音楽なんて音楽?
 なんか怖いんだけど……」

「この音楽は、【魔王】よ」

「魔王……」

 ゆかりの答えに茂が、少し引く。

「シューベルトね」

 美楽が、そう言って部屋に入ってくる。

「美楽さん。
 こんにちはー」

 茂が、美楽に挨拶すると美楽はニッコリと笑う。

「リンゴ持ってきたわ。
 茂くんも食べる?」

「うん」

 茂が頷くと、ゆかりが両手を広げる。

「あー。
 私が剥くよー」

 すると美楽が、首を横に振る。

「ダメ……
 私が剥く。
 ウサギさんの練習したいから……」

 美楽がそう言うと、ゆかりが笑う。

「ウサギさんの上手な作り方教えようか?」

「あ、はい!
 是非!」

 そして、美楽はゆかりから、ウサギの形をしたリンゴの上手な切り方を学んだ。
 茂は、沢山リンゴを食べて満腹になった。