――数日後。小学校

「今日から、このクラスの新しいお友達になる来島 茂くんです。
 茂くん、みんなに挨拶をしてください」

 そう言ったのは茂のクラスの担任になる女教師、東上 音子(とうじょう おとね)。
 24歳の新米教師だ。
 茂は、音子の言われた通り、軽く会釈したあと挨拶した。

「あの……
 はじめまして……
 来島 茂です。
 その……よろしくおねがいします」

 茂は再び、会釈する。
 するとクラスメイトたちは、拍手した。
 拍手した意味は特にはない。
 誰かが拍手をしたから自分も拍手する。
 それが伝染して皆拍手した。
 ただ、それだけの理由だ。

「茂くんこっちこっち」

 麻友が、手を振る。

「麻友ちゃん?」

 茂が、少し驚いた表情を浮かべる。

「俺らもいるぜ?」

 達雄が、そう言ってピースサインをする。

「達雄くん、静香ちゃん、みゆきちゃんも……」

「みんな一緒だよ」

 みゆきが、小さく笑うと茂は少し照れた。

「おとこ先生!その子も猫ナベ組ですか?」

 男子生徒が、そう言って音子に向かって言葉を放つ。

「コラ!私は、おとこ先生じゃありません!
 あと猫ナベ組って言うのも止めなさい!」

 音子が、そう言うと男子生徒が言葉を返す。

「質問に答えて下さい!」

「猫ナベ組だよ。
 なんか文句ある?」

 みゆきが、そう言うと男子生徒は萎縮した。
 その男の子は密かにみゆきのことが、好きだから……

「別に、文句はないけど……」

「じゃーいいじゃん?
 イジメたら承知しないよ?」

「イジメはしないけど……
 猫ナベ組は、超能力を持っているから怖いってかあちゃんが言ってた」

 男子生徒が、そう言うと他の生徒も不安そうな顔を見せる。
 すると茂は、ゆっくりとそしてはっきりした口調で言った。

「僕の能力は、ドレインって言って能力を持った人から能力を奪うギフトです」

「コピー能力?」

 女子生徒が、小さな声でそう言うと茂は首を横に振った。

「えっと能力を奪われた人は、その能力を使えません」

「ふーん」

 質問したのに関わらずその女子生徒は、興味なさそうにうなずく。
 この年代の子供たちにありきたりのパターンである。

「はい。
 質問タイム終わり!
 授業を始めるから茂くんは、麻友ちゃんの後ろの席に座ってね」

 音子は、そう言って茂を麻友の後ろの席に座らせた。
 そして、生徒が落ち着いたのを確かめてから授業を開始した。