―― 次の日・ゆかりの部屋

「あらあらあらあら。
 今日は小さなお客様がいっぱいね」

 ゆかりが、そう言って笑う。

「ああ、賑やかにさせてすまないな」

 百寿が、申し訳無さそうに謝る。

「ここで道徳の授業をするの?」

 みゆきが、そう言うと南がうなずく。

「はい。
 ここで命の勉強をしてもらいます」

「命の勉強?」

 達雄が、首を傾げる。

「能力者は、時として命の奪い合いになることがあります。
 でも、私たちは簡単に命を奪うことを良しとはしません。
 なので、少しでも命の大事さを知ってもらうため、命の誕生に立ち会ってもらいます」

「それで、僕たちも呼ばれたのか?」

 忠雄が、そう言って口元に手を当てる。

「ああ。
 そうだ……
 美楽も柚子も命の誕生に立ち会うのは初めてだろう?」

「うん」

 美楽がうなずく。

「で、この子は……?」

 柚子が、見慣れない少年の方に指を向ける。

「山田 風舞だ。
 ちょっと訳ありでな。
 暫く孤児院でお前らと一緒の釜の飯を食うことになった。
 仲良くしろよ?」

 百寿が、そう言うと茂がうなずく。

「風舞くんかー
 よろしくね」

 茂が、手を差し出す。
 すると風舞は、首を横に振る。

「僕は仲良くする気ない」

「え?どうせなら仲良くしようよー」

 茂が涙目でそう言うと麻友も口を開く。

「そうだよ。
 仲良きことは美しきかな。
 美しくなるには仲良くすることからはじめなくちゃ!」

「いい。
 僕はもう誰にも裏切られたくない」

「裏切ったりはしないよ」

 静香が、そう言うと風舞が答える。

「裏切らない人はいない」

 風舞の言葉で、その場が重くなる。

「まぁ、そのなんだ……
 ゆっくり仲良くなればいいさ」

 百寿が、そう言って風舞の頭を撫でた。