―― 次の日、ひらがな警察署特殊課課長室

「とりあえず、ご苦労だったな」

 博士が、そう言って茂の方を見る。

「だが、道徳の授業はまだまだこれからだぞ」

 百寿が、そう言うと南の口元が緩む。

「でも、今日の夜は子どもたちを連れて焼肉パーティーなんてのはどうでしょうか?
 もちろん先輩の奢りで……!」

「俺の奢りなのか?」

 百寿が、一歩下がる。

「ゴチになります!」

 南が、クスリと笑った。

「焼き肉か……
 それも悪くないな」

 博士が、そう言ってメガネのズレを元に戻す。

「まさか課長も奢られる気なのか?」

 百寿が、さらに一歩下がる。

「いや、焼き肉。
 食べ放題で良ければ奢るよ」

「マジでか!」

 百寿が、少し嬉しそうに笑う。

「6歳の子どもに奢られる気ですか?」

 南の顔が少し引きつる。

「今は、歳とかそんなの気にするな!
 今は、そんな時代じゃないぞ?」

 百寿の言葉に南が、ため息をつく。

「大人の威厳ゼロですね」

「いいよ。
 そういうところが気に入っているんだし」

 博士が、そう言うと百寿がうなずく。

「そういうことだ。
 南、お前も盛大に奢られろ。
 寿々苑(じゅじゅえん)の焼き肉はうまいぞー」

「寿々苑を奢ってもらう気なんですか?」

 南が、驚く。

「まぁ、寿々苑ならギリセーフかな」

「寿々苑ってなぁに?」

 茂が首を傾げる。

「高級焼肉店のことですよ。
 目玉が飛び出るくらい高いですが、舌がとろけるくらい美味しいお肉屋さんです」

「舌がとろけるの?
 怖いお店?」

 茂の目が涙目になる。

「舌がとろけるというのは例えだよ。
 とっても美味しいって意味かな」

 博士が、ニッコリと笑う。

「そうなんだ……
 お肉食べたことないからわかんない」

 茂が、そう言うと博士が笑う。

「そうか……
 なら、寿々苑で肉初体験だな!
 うっまいぞー、肉は!」

 博士は、そう言って豪快に笑った。

「では、私はじいやに電話をして子どもたちを寿々苑に来るように伝えますね!」

 南が、嬉しそうにはしゃぐと課長室を出た。

「アイツも子どもに奢られる気マンマンじゃないか……」

 百寿が、そう言うと博士が笑う。

「いいじゃねぇか。
 お前らは俺の部下なんだから!」

 そうして、達雄たちを連れたじいやたちと合流した茂たちは博士に焼き肉をごちそうになることになった。