茂が、目を覚ましたのはそれから3日後のことだった。

「目を覚ましたみたいね」

 美楽が、そう言ってマフラーを編む手を止めた。

「お姉さん誰?」

 茂が、そう言うと美楽はニッコリと笑った。

「貴方の命の恩人」

「え?」

 茂が首を傾げる。
 そしてゆっくりと記憶をたどる。
 勝也と轟の戦い。
 そして敗北……
 ゆっくりとおぼろげだが茂は全てを思い出した。
 だが、美楽のことは思い出せない。

「まぁ、お前が出たのはコイツが意識を失ってからだからね」

 忠雄が、そう言うと茂は少し困惑する。

「えっと、お兄さんも誰?」

「そうか、俺のことも思い出せないか……
 いや、知らないのだな」

 忠雄が、そう言ってひとりでうなずく。

「あー、茂くん意識戻った?
 それとも今は、勝也くん?」

 麻友が、そう言うと達雄たちが茂のベッドの周りに集まる。

「やっとおめざめか……」

 百寿が、コーヒー片手に現れる。

「あ……百寿さん?
 ここってちなみに何処?」

「警察病院です。
 貴方は、今まで眠っていました」

 南が、そう言うと茂はお決まりの台詞を言ってみる。

「どれくらい?」

「3日」

 南が静かに答えた。

「そんなに……」

「まぁ、心労もあったからのう。
 仕方無かろうて」

 じいやが、そう言うとゆっくりと茂の頭を撫でた。

「心労……?」

「心がつかれているって意味だ」

 百寿が、そう言うと言葉を続けた。

「すまなかったな。
 お前を、お前らをもっと早く助けれなくて……」

「……うん」

 茂は、どう答えていいかわからなかった。
 答えはいつだって闇の中……
 光のもとにある答えは嘘っぱち。
 茂は、百寿を許せない。
 でも、それ以上に無力な自分の力が許せなかった。

「百寿さん。
 僕、強くなれますか?」

「……強くなりたいのか?」

「うん。
 もう誰も傷つくところ見たくない」

「そうか……
 強くなれるかどうかは、お前次第だ」

 百寿が、そう言うと南が言葉を返す。

「百寿さん、少し冷たいですね」

 南の言葉に百寿が返す。

「そうだな。
 俺は冷たいのかもな……」

「なら、こういうのはどうじゃ?
 百寿が、茂を鍛える。
 そうすれば少しは茂も強くなれるじゃろうて」

 じいやの提案に忠雄が言葉を放つ。

「まぁ、少しだろうがそれもいいんじゃないのか?」

「じゃー、私も強くなるー」

 みゆきがそう言うと達雄たちもうなずく。

「そうだな。
 俺らも強くなって孤児院を護ろう!」

 達雄が、そう言うと百寿が小さく笑う。

「俺は厳しいぞ?」

「お願いします」

 茂は、軽く頭を下げた。
 茂は、強くなることを小さく自分に誓った。