「さぁ、これより行われますのは世紀の悪者貧乏男の自殺ショーでござます!」

 学校の裏山には、沢山の子どもたちがそこにいた。
 茂の知っている同級生から名前も顔も知らない上級生までがそこにいた。
 用意されていたのは、木と木にぶら下がったロープ。
 山崎は、茂の身体をロープの方へと押した。

「ヤダよ。
 僕は、まだ死にたくないよ」

 茂が、そう言うと山崎は茂の身体を蹴った。

「お前、ノリが悪いんだよ!
 お前みたなやつ死んでも誰も悲しまないんじゃねぇ?
 と言うかむしろ生命保険とか降りて親は喜ぶんじゃねぇの?」

 もちろんのことだが、茂の両親は茂に生命保険などかけてはいない。
 しかし、そんなことを言ったところでこのイジメは続くだろう。
 茂は静かに耐えた。
 殴られても蹴られても涙を流さない。
 それは、山崎たちをさらにいらつかせるには十分な理由になった。
 誰もそれを止めようとしなかった。
 上級生も同級生もその場のノリで茂を殴った。
 まだ6歳。
 幼い身体にそれは深く刻まれる。

  助けて
  誰か助けて

 茂は、心の中で静かに助けを呼んだ。
 言葉に出来ないそれは、静かに心の中だけに響いた。

  助けて……
  誰か助けてよ!
  どうして僕ばかり……

 茂の中で何かがささやく。

  助けて欲しいか?

 茂は、その声に頷く。

  助けて……

 茂の言葉と同時に茂の暗い心の中にあった白い点が一瞬で広がる。
 そして、それと同時に茂の意識が遠くなった。