そして、数日が過ぎた。
 茂は、百寿たちに案内されある施設に預けられることになった。

「ここがそうなの?」

 茂は、百寿に尋ねる。

「ああ。そうだ。
 ここはお前のような特殊な力を持った子どもたちが集まっている施設だ」

「そっか……」

 茂は群れが苦手だった。
 群れとは、勝者と敗者にわかれる。
 茂はいつだって敗者だった。
 そんな茂の心の支えは、ものも言えぬ美奈だけだった。
 しかし、美奈はもういない。
 美奈の葬式すらあげることができなかった。
 茂が、次に美奈に会ったのは小さな箱に収まった後だった。

 茂は、心の中で美奈に謝った。

  「助けてあげられなくてごめんね」

 その言葉は、虚しく声に出すことが出来なかった。
 大きくなったら美奈の墓を建てる。
 そう心に誓った。

「お前新入りか?」

 茂と同じくらいの歳の少年がそう言って茂に尋ねる。

「うん」

 茂は、恐る恐る頷く。

「そうか……
 俺の名前は、天宮 達雄(あまみや たつお)。
 お前は?」

「来島 茂……」

「茂だな?
 よし、覚えた!」

 達雄は、そう言って手を出した。

「なに?」

 茂は、怯えた表情を見せながら達雄の方を見る。

「友情の握手だ。
 名前を名乗りあった男たちが友情を結ばなければならない」

「なにそれ?」


 達雄の言葉の意味は茂にはわからない。

「友だちってことだ」

 百寿が、そう言うと茂の表情が固まる。

「友だち?」

 茂が、今まで欲しくても手に入らなかった存在。

「そうだ。
 俺とお前は今日から友だちだ」

 達雄は、そう言って強引に茂の手を掴み握手をした。
 茂に初めて友だちができた瞬間だった。