誰かが言った。
  『愛の反対は憎しみではなく無関心です』
  だけど僕は常に思う。
  無関心とは、究極の愛情だと……


 来島 茂(くるしま しげる)は、その日7回目の誕生日を迎えようとしていた。
 その日もいつものようにクラスメイトからの陰湿なイジメを受けていた。
 理由は簡単。
 家が貧しいから……
 【借金男】
 それが、茂のあだ名。
 茂の両親は、借金を借金で重ねていた。
 借金の理由はギャンブル。
 父も母もギャンブルに溺れそのギャンブルをするためにさらに借金を重ねていた。
 茂は、まともに食事を食べていないため身体は痩せこけ。
 茂の妹である美奈も痩せており食事も茂が万引きしたミルクで何とか生きていた。
 そのミルクもそろそろ無くなる。
 茂は、今日も万引きをしようとスーパーに向かう途中クラスメイトに会った。
 クラスメイトは、茂を捕まえると学校の裏山まで連れて行った。

「おい。
 お前、いつ死ぬんだ?」

 そう言ったのは、茂を虐めているクラスメイトのリーダー。
 山崎だった。

「……僕はまだ死にたくない」

 茂は、妹のため生きることを放棄したくなかった。
 むしろ妹のために生きなければいけなかった。
 何度も何度も死ぬことを考えていた。
 だけど、死ねなかった。
 妹のため。全て妹の美奈(みな)のため……

「お前の意見なんて聞いてないんだよ!」

 山崎は、そう言って茂の身体を蹴った。
 痛い……声に出して言いたかった。
 だけど、茂は言葉に出さない。
 声を出して泣いてもおかしくない歳。
 だけど、茂は涙を流さない。
 何故なら声に出せば、もっと殴られ。
 泣いても誰も見ないし聞きもしない。
 茂にとって涙は武器ではなく、ただの虐められる原因のひとつだった。