「凌ちゃん!」
「なんだよ」
「アイス食べたいから買いに行こうよ!」
「だるしい、やだ」
「だめ!買いにいくよ!ほら!はやく立って!」
優しい笑顔で俺の手を引くのは幸那で…
幸那の隣にいるのは俺で…
「ゆき…」
好きだよ、俺はお前が好きなんだよ…
「――…うや!りょうや!」
「……」
「凌也…あんた大丈夫?」
姉の葉月が俺の体を軽く叩いた。
目をゆっくり開けてみる。
ああ、あれは夢だったのか。
幸那は……
俺の記憶の中ではいつも笑ってる。
泣いてる姿を俺は―――
あの日、初めてみた。
俺の見た最初で最後の涙だったんだ。