「知ってる」
短い舌打ちと共に吐き出された言葉は、女らしさの欠片もない。
「あっそ。」
「…もし」
「は?」
小さく呟いた夏奈は俺が聞き返しているにもかかわらず、言葉を吐き出し続ける。
「もし…あんたが好きになった人が‘先生’だったら、どうする?」
いきなり何なんだよ。
「俺、女好きにならない」
先生だろうがなんだろうが‘女’を好きになることはない。
「…あ、あんた、もしかして―――」
「違ぇよ」
夏奈の言いたい事がわかって最後まで聞かずに言葉を遮る。
「…好きな人がいるってこと、誰にも言わないで」
「あぁ。分かってる」
そあとは2人ともずっと無言だった。
たまに目があったときはお互いに睨み合ってまた逸らす。
一体何がしたいのか俺もわかんなかったけど。
「…そろそろ帰るから」
夏奈がそう口を開き「じゃぁ」と言って帰っていった。
俺も帰るか。
ゴミを捨て店を出た。