「ただいま」
家に帰ると仕事から戻った母がキッチンから顔を出す。
「おかえり。ご飯どうしようか」
疲れた顔をしている母。
19歳の私は、この母が稼いできたお金で生活している。なんとも情けない話だ。
「食欲ないんだ、だからいいよ」
食欲なんてあるはずもない。
1日家にいてなにもしないんだから、エネルギーが出て行く場所なんてどこにもないんだから。
「そう…そういえばね、今日昔一緒に働いてた人に久しぶりに会ったの。話が盛り上がってね、みーちゃんの話ししたんだ。そしたらさ、一回店に来ないか、だって」
母は9年前に離婚をして、女手一つで私と弟を育ててくれた。
昼も勿論働いてはいたが、それだけでもキツイものがあり、夜も働いていた。
店を移ってはいるものの、今も働いている。
「夜の仕事なんて無理だよ…人とまともに喋れないのに」
もう2年以上人とまともに話していなかった。
家から出ず、話すのは家族だけ。
何年もこうしていると他人と話すことが怖くなった。他人は私を傷付けようとしている、言葉のナイフをいつも喉元に突きつけられている、そんな感覚。