母の機嫌、場の空気、そして居心地までも悪くしてしまった俺はさっさと家を出た。

家を出て数分間俺は考え事をしていた。

(一体あの女誰だ?なんで俺の家族と仲良くしてる。俺は一人息子なんだから女がいる時点で変だろ。でもあいつどっかで…)

あと少しで思い出しそうな時に邪魔が入った。

「陽ー!おはよう。なぁにぃ?陽らしくないなぁ暗い顔して。」

「うっせぇな。俺だって考え事の一つや二つあるんだよ。」

こいつは俺と同じ光世中学校に通う崎山由加。

同じクラス。

別に付き合っているわけではないが幼馴染みで一番親しみ深いやつだ。

昔から人に飛びかかるのが好きみたいで、特に俺に飛びかかる時は背後を狙ってくるくせがある。

「ていうかさ陽。さっきから思ってたんだけど陽の隣を歩いてるその女の子は誰?」

(何を言っているんだ?)

由加が俺の後ろに指を指す。

その指してる方に顔を向ける俺。

絶句&唖然。

なんと後ろに立っていたのは今朝家で見た女。

「おはよう。」

女は俺を通り抜かして由加に挨拶をする。

由加も先程までとうって変わって昔からの友達のように挨拶を交した後女に飛びかかった。

「お、おい由加。知らないやつに気安く飛びかかるな!それとあんた!ずっと言いたかったんだけど一体誰なんだよ。」

二人は俺を置いて先に歩いていた。

俺が引き止めたことで二人共後ろに振り向いた。

「ひどい!陽君、私の事知らないなんて…」

女は顔を両手で覆って泣きじゃくる。

男子たるものさすがに女の涙には弱い。

「そうよ陽!いくらなんでもひどいわよ。あんた前に言ってたじゃない。今度親戚の子がしばらく家にいるって。」

由加も女の泣いてる姿を見て加勢する。

(親戚?しばらく家にいる?どういう事だよ!俺一言もそんなこと言った覚えないぞ。)