これって…。
もしかして…。
嫉妬ってやつですか!
これは分かり易い!
ってそんな事思ってないで…。
落ち着け。私。
今までは漫画やドラマで見るだけだったけど、いざ自分自身がこの立場になると、どうしたらいいか全然わからない。

「す、拗ねてる?吉川君…」

おどろおどろ聞いてみた。
無駄に刺激を与えたら昨日の私みたいになるかもしれない。
……。
いや、それだけはないな。

「別に……。拗ねてなんかない……」

はい。確定です。
吉川君拗ねました。
稔人君に嫉妬です。
そして吉川君はツンデレさんだったのです。
何だこの語り方。

困ったな…。
このままだと気まずくなってしまう。
笑わせるどころか方向性が真反対。
まあ、ある意味表情を動かすって事は出来たけど。

よし、試しにやってみるか。
メモ帳に文章を書く。
書いてる途中に少しだけ笑っちゃったのは秘密だけど、なんとか書けた。

あとは見せるだけ。
正直、ちょっとだけ緊張してる。
けど怖くなんかない。
彼を知れて楽しいって思える自分がいるくらいだから。
大丈夫なはず。

【康介、ごめんね。
康介の気持ち全然わかってなくて。
でも、ヤキモチやいてくれてたのスゴイ嬉しかったよ?
ありがと。康介】

ああああぁぁぁぁああ!
見せちゃったー!
もう後には下がれない。
前進するのみであります。

さっきまでの 安心感はどこへやら。
見せた後、一気に何かが冷めた。
胸が高鳴る。
そして心臓がもつことを祈る。

拗ねた顔は段々といつもの無表情に変わっていった。

「愛……」

なんか、今にも泣きそうな声で言われた。
私の方も変な気持ちになって言葉が出てこない。

「死ぬほど嬉しい…」

そう言って大きな手で顔の鼻から下を覆い隠す。
赤面しているのだろう。

【可愛い所あるんだね。康介でも】

「最後は余計だ。
あと、愛の方が全然可愛いから」

【そんな事言われても説得力ないよー】

意地悪な顔をしてみる。
結構楽しい。
私って最低?

「はは、ヤバイ。幸せ過ぎる…」

はぇ?
今、笑ったよね?
即座にメモ帳に

【笑った!】

って書いて見せた。

「……あ。
……そりゃあ、俺だって人間だからな」

不覚にも!って思ったのかな。
最初自分でも笑ったのな気がつかなかったらしい。

【康介の笑顔見てると何か澄んだ気持ちになれるよ】

「え、なんで?」

なんでだろうね。
私にもわからない。
わかないけどその笑顔が大好きなんだよね。

「でも愛以外の人の前でこんな風に笑ったことない…。これは愛の特権」

特権だなんて…。
なんか嬉しい。
独占欲が喜んでます。
ウハウハ言ってます。(独占欲が)

【ありがと。康介大好き】

条件反射に近い形で書いてしまった。

「俺も……」

その時には、もういつもの無表情だったけど、気持ちだけは誰よりも豊かだってわかった。