「まぁまぁ!こんな事よりも、さっさとプリント配って帰ろうぜ」

切り替え早いな、稔人君。

【そだね】

プリントを配る。
1枚は練習計画表。
もう1枚は来週の試合について。
あれ、よく見ると練習試合なんだ。

「これで、今日の練習を終わりたいと思います」

皆が起立する。

「あのー、その子誰?朝もいたよね?」

手を挙げて急に喋ったのは稔人君でした。
てか、知ってるよね!?
なぜに聞いたのだ。

「……あぁ、今日1日マネージャー体験をしてもらった古田愛さんです。3年なので、1、2年からすると先輩になる」

「自己紹介してー!」

ハイテンションな稔人君。弄ばれてるよね。私。

仕方なく、メモ帳にサラサラ自己紹介文を書く。

【皆さんこんにちは。古田愛です。シャイな訳じゃなく《失声症》という病気です。
ですが、お構いなくどうぞ。
あと、気軽に話しかけてください。
よろしくね

回してください】

淡々と書いたな。我ながらそう思う。
単語の塊よりわかりづらい文章だし。


端っこの人に渡す。
これしか方法ないもんね。
仕方ない。仕方ない。

くるりと回って全員が見たところで吉川君が

「では、練習を少し早いが終わりたいと思います。礼!」

「「「ありがとーございましたー!」」」

こうして今日の練習はおしまい。
鍵は私が持ってたから今日は私が鍵閉め当番。

けど、バレー部と卓球部がまだやってるみたいなので卓球部の人に鍵を渡して帰ることにした。

「……愛!」

よ、吉川君!?
何か用事あったっけ?

「これ、忘れもん」

あ、本当だ。
忘れてた。

「今日、書いてくれるよな?」

コクリ

勿論ですともっ!

渡されたそれは、今日渡された入部届でした。

「ありがとな、嬉しい…」

私はその言葉だけで嬉しいです。吉川君。

「一緒に帰るか…?」

コクコク

思い切り頷いた。

「じゃあ、行こ」

2人で体育館を出た。