コンコン

職員室へは無言で入れる。
その代わり先生からの一斉の視線を浴びせられるけど。

中田先生に近寄る。
相変わらずの体育会系美人。
綺麗な眉に、特徴であるつり目。
化粧もあんまりしてないし、素が綺麗なんだろう。

【すみません】

机にメモ帳を置く。

「ん?私?」

コクリ

【バスケ部の】

「あ〜、はいはい!これね」

バサっと紙を貰った。
2種類の紙だ。
まだ全文書いてないのに理解してもらえたみたいだ。

「よろしくねー」

カタカタとパソコンを打ちながら話す。
こう見ると授業中の体育会系の面影は一切無い。
ちゃんとしたビジネスウーマンだ。

「……って!ちょっとお待ちなさいな!」

【ありがとうございます】

って書きかけの時に話かけられた。

「古田って部活してないよね?」

あ、バレました?やっぱりね~。
あはは。

コクリ

「もしかしてマネージャーやってくれんの?」

【予定では…】

「本当にっ?助かるわぁ。人手が全然足りてなかったのよ~」

と言って先生が引き出しを開ける。
その中から出したのは。

「じゃ、これ、マネージャーするなら書いて提出ね」

入部届だった。

この際だから聞いてみる。

【先生は部活に出ないんですか?】

「それ、聞いちゃう?」

やっぱり失礼だったよね。
こんな事を聞いた自分を殴りたいです。はい。

先生はニヤリと笑って

「度胸あるねぇ。そうゆうの、嫌いじゃないよ。知りたい?」

コクリ

頷いてしまった。
なんか条件反射で。

「3年前から学校の方針が変わったの。勉強重視にね。
だから他校に比べてこの学校は保健の授業が多いし、授業の準備も大変なんだ。
でも、暇さえ出来れば部活に行ってるよ。勝ちたいからね。
負けたくて練習してる訳じゃないから」

あの中田先生がこんな事を考えているとは意外たった。
その苦笑いも心に刺さる。

「だから古田には是非バスケ部のマネージャーをして欲しいわけ」

先生は先生で大変なんだね。
中田先生の場合は3学年全部だからよっぽど大変なんだろう。
誰かが[残業の嵐である職]って言ってたのも満足する言葉だった。

【私が入部する事で彼らを助けられますか?】

最後の質問。
これで私の未来が変わる。

「もっちろん!特に部長なんかは凄い助かると思うし、何より古田も一緒に成長出来るんだよ」

一緒に…成長?
その時の私には、言葉の意味が理解できなかった。

「それじゃ、そのプリントよろしくね」

ヒラヒラ手を振って再びパソコンへ向かう。
メモ帳を取って職員室を出る。

頑張れ!中田先生!

と思いながらね。