何かにぶつかった。いや、正しくはぶつかられた。勢いはなかったものの、相手は、すんなりと倒れてしまった。

そこで俺は恋をした。

自分でも可笑しいよな。と思うほど変なタイミングだった。
でも、それは完全なる一目惚れだった。

でも、彼女は綺麗な髪を1つに束ねて、飾り気のない可愛い顔をして、荒れてない白い肌。

それと、目の前に突き出された【すみません】の文字。

心臓が締め付けられそうな感じになった。苦しい。

ノートって事は、聴覚障害のあれ?その辺の知識は兼ね備えてないし、手話だってできやしない。

取り敢えず、手を合わせてお辞儀した。通じたかな?

それから、何はともあれ倒してしまったのだから罪滅ぼしとして、起こさないと。中学にもなって男女が手を繋ぐのもあれだが。

スッ

手を差し延べる。しかし_____

彼女は俺には触れてくれなかった。

別に悲しくはない。かと言って嬉しい訳ではまんざらない。何だろう、この……

悔しい気持ち。

こんなにぎこちない感情になったのは初めてで、落ち着かない。

と思うのもつかの間。
俺は拾い物をした。

ん、なんか落ちてる。ってさっきの人のメモ帳じゃないか?

どうすればいいんだ。これ。

拾い上げて、とっさに中身を見ようとしてしまった。危ない、危ない。すぐに何でも見てしまう俺の悪い癖。気を付けないと。拾い上げたメモ帳をポケットに入れた。ごくごく自然に。どうするべきなんだ?拾った事を隠して捨てる?いや、そんな事をしては彼女に失礼だ。
そうなれば返すしかないだろう。