無声な私。無表情の君。

「お、おい……。
そろそろやべぇんじゃねぇの?
よ、し、か、わ、くんっ?」

1人が康介の肩に触れて話しかける。
な、ないす!

「うるさい、黙ってろ、話しかけるな」

そう言って、そいつの事もボロボロにし始めた。
殴る事に慣れていない手の皮膚はもう限界まできていた。
それでも、康介は殴る事をやめなかった。

これじゃあ、らちがあかない。
突然の事に涙が出てきた。
なんでかは分からない。
いつの間にか頬を伝うほど溢れていた。
身体はカタカタ震えてて、立っているのがやっとの状態。

それでも、やめさせないと。
康介にやめてもらわないと。
康介に近づいて必死にしがみついて

(こうすけ、こうすけ、こうすけ)

って言った。
声にならなくてもいい。
思いが伝わればそれでいい。
でも、現実そうはいかなくてさ。
また、奇跡が1つ起こった。

「愛、離れてくれ……」

「……す、け……こぉす、け……」

出る事はもうないと思っていたのに。

「こ、康介!…やめて…」

「え、なんで…声……」

「やめてったら!」

もう、とっくの昔に殴る事はやめている事に今更気づく。
ちょっと恥ずかしかった。
そのすきに男3人はお互いを支え合いながら帰って行った。
言いたいが山ほどあったのに。