無声な私。無表情の君。

パシィッ

「……んだよ。吉川の分際でさぁ……」

目を開けるとそこには相手の拳を捉えた康介の姿。

「かっこつけてんじゃねーよ!」

もう一方の拳を向けてくる。
その腕も掴んで

「お前らこそ愛に手ぇ出してんじゃねーよ」

そう呟いた。
声しか聞こえなかったけど多分すごく怒ってた。
そしてそのまま長い脚で相手の腹をひと蹴り。
倒れた相手にまたがって何度も何度も顔面を殴っていた。
他の人は唖然と立っていて、私と同じく、ただただ見ることしか出来なかった。

「……ぐっ…や、やめろ!…やめてくれよっ!……あ゛ぁ! 」

もう顔中真っ赤になりながら必死に喚いていた。

「……やめる?俺だって何度もそう叫んだはずだ。
そんな時、お前らならどうした?」

「……ひぃっ!……」

無情にも康介は殴る事をやめない。
なんか、康介が悪人に見えてきた。