無声な私。無表情の君。

いつの間にか掃除は終わっていて、既に下校時刻が迫っていた。
急いで体育館の鍵を返却して、校門へ向かった。
そこには、やはり昨日と同じく東雲君がいた。

「あ、きたきた」

【ごめん、おそくなったね】

「全然大丈夫ですよ」

笑顔が眩しいです。
そして眩し過ぎて怖い。

「行きましょうか」

コクリ

「では失礼します」

ギュッ

なっ!なんだと。
私が頷いた途端東雲君が私の手を握ってきた。

「あはっ。ビックリしちゃって」

いや、あはって言われても。
離してほしい。
一刻も早く。
てか、私と手を繋いでどうする。
もっと相応しい人がいるって。
グイッと手を引っ張って離そうとする。
すると

「ダメです、先輩」

さっきよりも更に強い力で握ってきた。
正直痛い。

「このままでいさせてください」

その時見せた切ない顔。
私の心に情けが生まれる。

「お願い…します」

コク

頷くしかなかった。