無声な私。無表情の君。

体育館の鍵を閉め、鍵を返しに職員室へ寄った。
ペコッとお辞儀をして出ていく。
廊下に出た所には、なんと昨日一緒に帰った東雲君がいた。

「あ、おはようございます」

【おはよ】

「先輩、朝から職員室に用があったんですか?」

【カギ当番だからさ】

ニコッと営業スマイルをする。
そして、少しゾッとしてしまう。
東雲君は2年。
2年の教室へは間違いなく反対側の階段を使った方が便利なはず。
東雲君の場合2-E だから断然あちら側を使うはずだ。
まさか、待ち伏せ?
そう考えると背筋が少し震えた。
さりげない会話も実は考えて来たとか...。
あぁ!怖いっ。

「そうですか。お疲れ様です。
教室まで送りましょうか?」

紳士だ。紳士過ぎる。
でも、それが逆に怪しかったりする。

【大丈夫】

教室までですよ?
ほんの2分で着きますから。
本当に育ちのよろしいお坊っちゃまな事で。

「本当ですかー?」

いきなり、顔色を伺ってきた。
こんなブスの顔を朝から拝むなんて可哀想に。

「いや、ダメです。
先輩、今日嫌な夢見たでしょ。
顔色悪い」

夢というか...。
現実で見たんだよね。
嫌な事。
見たくなかったな。
それだけ、ショックが大きかった。

「はいっ。俺、荷物持ちますからください。
先輩は気をつけて階段昇ってください」

鞄を取られる。
同時に一気に身が軽くなった。

それから、本当に2分ぐらいで教室についた。
東雲君には悪い事してるなって思ってる自分もいるけど、かといって反論する自分もいなかった。
ただただ笑顔が怖いって思ってた。

「はい。どうぞ」

【ありがとう】

荷物を受け取る。
ってあれ?離してくれない。

「もちろん、今日も一緒に帰ってくれますよね?」

笑って無い。
目が笑って無い。

「せーんぱいっ♡」

ここでNOを出すとどうなるか。
私はよく知っている。

【わかった】

昨日は何とも無かった会話も日付が変わるだけでこんなにも怖くなるのか。
凄いな。人間って。
改めて思った。