無声な私。無表情の君。

一瞬だった。
ほんの一瞬だけ見えた。
何あれ、あんなあざ、昨日あった?
わからない。記憶が無い。

あんなに康介の事見てたのに……。
あんなに想ってたのに……。
あんなに愛し合ってたのに……。

昨日の康介も思い出せない。
なんだ、結構記憶、消えてるじゃん。
シャワーの時かな?流れちゃった?

多分、私の癖なんだろうけど、泣きたい時とか、悲しい時とかは大抵ポジティブになる。
精神が回りすぎちゃってさ。
どう仕様もない。

話しかけたい。
でも、無理。
なんか、ねぇ。だめなんだ。
今までだったら話しかける事なんて朝飯前だったのに。
今じゃあ、不可能に近い。
気持ちはあるけど、身体が動いてくれない。
不便な身体を持ったものだ。

それからは康介の後ろ姿を見るのが怖くて、ずっと風景とか、コンクリートとか見て、あの手この手であざを見ないようにしていた。

学校に着くと、靴を履き替えて、そのまま職員室へ入って鍵を取りに行く。
これが、いつも学校に来てする、最初の行為。
もう、とっくの昔に日課になった。

体育館を開けると、まだ誰もいない。
卓球部もバレー部も、まだ誰も来ていない。
いつも、私が最初。
これが仕事だからいいんだけどさ。

私が入ると同時に、次々と部員、他の部活の人たちが体育館へ入ってくる。
もしかして、開けてもらうの待ってる?
はぁー、嫌な役。
気づかなければ良かった。
こんなのも被害妄想の1つ?

練習の準備をする。
その間に部員はストレッチとか外周したり…と、まあ、こんな感じだ。

「愛……」

この声って…

「……あ、あぁ、すまない。なんでもないから…」

康介?

「ごめん……」

本当に康介なの?

私の目の前にいる人は