そして時間はたち、

「皆、今日もありがとう!
明日もあるんだからね?
ちゃんと来るようにーっ」

この喫茶店では必ず川上さんの
言葉で締めくくられ

「はーい」
「了解でーす」

など、おのおの返答をしてから
解散するというのが毎度の流れ。

バイトは私を含め5人いて
女3人男2人である。
ちなみにみんな高校生である。

ちゃんとした店員さんは2人で
30代の峯岸さん(女)と30代の谷村(女)さん
川上さんとは10年以上の親友なんだとか。

「あっ、俺あした来れないっす」

こちらはバイトの颯海 奏 (はやみ そう)
私の一つ上の先輩である。
言葉遣いはチャラいが外見もチャラい。
この付近では有名で俗に言う
“イケメン“らしい。颯海くん目当ての
お客さんも少なくはない。

「どうせ、またデートとか言うんでしょ」

こちらは高橋 茉莉亜 (たかはし まりあ)
私の一つ上の先輩である。
事あるごとに颯海くんにつっかかっている
きっと好きなのだろう。

「おっ、まりあ当たり!」

「あっそ、別に嬉しくないし…」

ツンデレだなー
なんて要らないことを考える私。

「あっ、そこイチャつかないのー」

こちらは私の親友の
白石 莉沙 (しらいし りさ)
先日、彼氏と別れたばかりで
気が立っている普段はもっと温厚である。

「まぁまぁ、みんな早く帰ろうよ」

こちらは真壁 翔 (まかべ しょう)
私の二つ上の先輩である。
いつも優しく温厚である。
莉沙の事を好きなんじゃないかと
密かに思っている。

翔先輩の言葉でみんな帰る準備を始める。

「さようなら」

私は足早に別れを告げ店を出た。
今日は凄く見たいスペシャルドラマ
の放送日なのだ。

急いで電車に乗り、
ギリギリ間に合いそうだ。

あまり人が乗っておらず
イスに座れ特にする事もないので
スマホをイジっていたら
不意に声をかけられた。

「あの…」

なんとも爽やかな声である。
頭をあげ、声がした方を向く。

「これ、貴方のですよね」

と言って差し出されたのは
見た事もない可愛い花柄のスマホケース

「え…いや私のじゃ…」

突然の事にアタフタしていると
クスクス っと彼が笑った。

「冗談だよ。
君のバリバリだからあげようと思って
こういう物を扱ってるお店で働いてて
キズとか入ってるのを見ちゃうと
あげたくなっちゃうんだよね…」

貰ってくれる?なんてクシャっとした
笑みをこちらに向けてくる。
不意に顔が熱くなるのがわかる。

「私でいいなら…頂きます」

「うん、どうぞ」

あまりの優しい目に
心を射止められた気がした。

“格好いい“ 初めて心から思えた。