ガシャン
先程までのうるささはどこへやら
物音一つで静まり返った店内。
「っ… 、やってしまった」
大事なお皿を割ってしまいながらも
お客さんに対して冷静な分析をしている
私は、鈴宮 咲綾 (すずみや さあや)
私が居るのはバイト先の小さな喫茶店
ウェイトレスをしていてお客さんが
食べ終えたお皿を運んでる最中に
落としてしまったのだ。
「ちょっ、ちょっと咲綾ちゃん 」
急いで駆け寄ってきた、このオジサンで
ありながら女性のような仕草
まさしくオネエである店長の川上さん
「すみません、やってしまいました」
深々と頭を下げた私。
お皿を割ってしまったのは
今回で3度目である。
「平気よ!私なんて数え切れないくらい
バイトの時お皿割っちゃったから」
この川上さんの発言によって
店内はまた、もとのうるささに戻る。
「お嬢ちゃんオジサンが慰めてやるよ」
なんてセクハラもどきの野次まで聞こえる
そこは、あえてのスルーだ。
「もう、やだぁー!
じゃあ私を慰めてもらえます?」
川上さんがキラキラした目で
先ほどの野次を飛ばしたオジサンに言う。
「ははっ…じょ、冗談だぜ」
冷や汗をかきだし、コップに入っている
アイスコーヒーを急いで飲み干し
逃げるように去っていった。
これには、笑うしかない。
「なによー!もう」
拗ねた川上さんは、置いておこう。