甘い時 〜囚われた心〜

尚人は、持ってきたノートパソコンを開き、会社の会議資料を作成していた。

ここは、階段の一番下。

そこに腰を下ろしている。

なぜ、ここにいるかというと、ここは、屋上のすぐ下の階で、尚人が飛び出していった二人を追いかけ、やっと探しだした頃には、明らかにヤっているだろう声と、扉の揺れを見たからだった。

いつ人が来ても可笑しくない場所。

仕方なく、尚人は下の階で人が上がらないようにするしかなかった。

案の定、何人か生徒がやってきた。

「あの…」

茶髪にピアス、明らかに遊んでいます風な男が2人。

尚人の前に立ち止まった。

どうやら、尚人が桜華の秘書なのを知っているようだ。

ノートパソコンから、2人に目を向ける。

「今は無理ですよ」

冷たく、それだけを伝える。

「そう言われても…」
「それに…今、授業中ですよ」

「それ言ったら、あんただって!」

2人を軽く睨み付ける。

静かな廊下に、2人の声が響いた。

「ちっ」

2人が舌打ちをした時、小さな声が聞こえた。

「あっ…あん…」

「!?」

2人がお互いの顔を見合わせると、一緒に尚人を見た。

「ちっ」

今度は、尚人が舌打ちをした。

2人は、顔を赤くする。

尚人は、わざと2人の側に歩み寄り、小さく囁いた。


「今、何か聞こえましたか?」

2人は、ブンブン首を横に降る。

「ですよね?私達以外は誰もいませんから…この階段の上にも…」

2人は今度は首を縦に降ると、バタバタと走っていった。

二人を見送ると、尚人は階段の上に目を向けた。

「はぁ…」

深いため息をつくと、また、階段に腰を下ろして、ノートパソコンを開いた。