甘い時 〜囚われた心〜

「え…?」

晋也の険しい顔が、昔を思い出し、少しずつ緩んでいく。

「勇馬は……」

百合矢はギュッと手を握り締め、何かを決心したように強く晋也を見つめた。

「勇馬は、ずっとお前を心配していたんだ。本当は、当主の座も、お前にやったっていいって言っていたんだ…」

「…う…嘘だ…」

晋也は、真実に怯え、信じようとしない。

「本当だ…でも、その頃、神楽家は、相当ヤバイ状態だったらしい…親父さんが、お前がしたように裏金を流していてな…それが、世に出かかっていたんだ。裏金なんて、あって当たり前。暗黙の了解…そんな世界だろ…でも…世の中は、それを許さない。親父さんを守るためにも、神楽を守るためにも、勇馬は…それを全力で防いだんだ…でも…それをすることは、犯罪だ…バレたら捕まる…当主になるという事は、罪を重ねる事にもなる…神楽の力は…そんな危うい力なんだ……勇馬は…お前に、それをしろとは言えなかったんだ…」

晋也は、数年間守られていた事実を知り、涙を流した。

「…兄さ…ん…」

「勇馬は…お前を…大切に思っていたよ…」

「…はい……は…い…」