「俺は、あなた達を許すつもりはありません。雛子を一人にした事も、雛子を危険な目に合わせた事も…」

二人を冷たく見下ろし、桜華は無表情で伝えた。

「でも…雛子は…お人好しだから…そんな、あなた方でも家族だと…唯一の家族だと泣くんです」

晋也は、その言葉に、雛子を見つめた。

「雛子が許すと言った…もう、俺が何を言っても聞かないんですよ…」

晋也は、崩れるように頭をたれた。

桜華は祐希奈に目を向けた。

「祐希奈…お前は俺が好きな訳じゃないだろ?雛子への憎しみが俺を手に入れる事で晴れると思ったんじゃないか?」

「雛子ちゃんが持ってるもの全部、奪ってやるつもりだった…今まで、私が思ってきた感情全部、雛子ちゃんも味わえばいいと思ってた…」

涙は溢れ、憎しみは乾かない。

「思ったよ…」

小さく雛子の声がした。

「家を出される時、怖くて、どうして私がって…どうしたら生きていけるのかも分からなかった…」

思い出して、不安な顔になる。

「桜華を好きになって…祐希奈ちゃんが現れて…嫉妬した…桜華に触れる手も、婚約者っていう立場にも…嫉妬してた…」