甘い時 〜囚われた心〜

「妊娠・出産は衣頼の体に多大な負担になる。下手したら死に繋がるんだ…賛成できなかった」

「衣頼はね…それでも産みたいと言い続けたの。いくら私達が説得してもダメだった…」

思い出して美那の目に涙が光った。

「勇馬が折れたんだ。俺達はできるだけ衣頼の負担が減るようにサポートすることしか出来なかった…」

百合矢は美那の涙を拭ってやると抱き締めた。

「無事に雛子ちゃんを産んだ後、衣頼も少しずつ元気になっていった。一年たった時かな。いきなり衣頼が旅行に行きたいって言い出してね。しかも桜を見たいって…桜なんて散った後で、残ってるのは北海道ぐらいだった。勇馬家族、智則家族、俺達家族と智則の病院の医療チーム付きで北海道に行った…」

「綺麗だったね…桜も…衣頼も…」

溢れる涙。

ギューッと百合矢にしがみつく。

「智則の私有地があって、そこの桜を見に行ったんだ。満開の桜が風に散って本当に綺麗だった…」

「お弁当とお茶のセット持って、お花見したの…あなた達は覚えてないでしょうね…まだ一才になったばかりだったもん…幸せだった…」