甘い時 〜囚われた心〜

泣き崩れた祐希奈を残し、屋敷を後にした。

車に乗り込み、深く息を吐いた。

「お疲れ様でした」

尚人が備え付けられたクーラーからミネラルウォーターを取りだし、渡した。

それを一気に飲み干す。

スーツの前をはだけ、ネクタイを緩め、シャツのボタンも二つ外した。

「終わった…」

「はい」

「ありがとうな…お前のお陰だ」

桜華の突然の感謝の言葉に一瞬ビックリする。

「いえ…お力になれて良かったです」

緊張なんて微塵も見せなかったが、見せなかった分、一気に溶けた緊張に、疲労感が襲ってきた。

ピリリ…

尚人の携帯が鳴る。

「はい…あっはい。お待ちください」

携帯を耳から外し、疲れきった桜華を気遣いながら呼んだ。

「桜華様…」

「あ?」

疲れきってシートに体を預けていた桜華が少し体を起こした。

「お電話です…百合矢様からです…」

疲れきっていた目に力が戻る。

携帯を受けとると向こうから聞きなれた声がする。

「桜華か?今日本にいる。今から顔を出せ」

いつもと同じ急な帰国報告だった。