「さてさて」


 蝉の鳴く声が、ツクツクホーシと涼しげな声に変わった頃。

 サッと立ち上がったそうめんが、パンッと両手を合わせた。


「イタタ」

 
 正座したから足が痺れたのか、立ち上がったそうめんは少しよろけた。


「っと。あぶねえ」


 あぐらをかいていたうどんはサッと立ち上がり、よろけたそうめんを支えた。


「だいじょぶ?」

「えっ・・・!あ、はい・・・。だいじょ、ぶ・・・です」


 顔を真っ赤にしたそうめんは、照れ隠しのように長い前髪を耳にかけると、そそくさと台所へと向かった。


「そうめんくん~。なにか私も手伝うよ」

「本当ですか?ありがとうございます」


 スッと立ち上がり、そばも台所へと向かった。


「なんだ、ありゃ」

「え?気付いてねえの?うどん」


 首を傾げたうどんに、冷麺は目を見開いて言った。


「何が?」

「そうめんのヤツ、あいつ・・・」

「おい、冷麺。デリカシーないぞ」


 眉間にしわを寄せたざるそばが、冷麺の言葉を遮る。


「おいおい。そこまで聞いたら、続き気になるってモンだろぃ?聞かせてくれよ」


 肩をすくめ、うどんは話の続きを催促した。


「なら、ちゃんとそうめんに許可取ってからにした方がいい」

「ん」


 ざるそばがそう言うと、冷麺はちゃぶ台に手をつきながら立ち上がり、台所へと向かった。