「うん!」

「おおぅっ?!」

「うん!解けない!無理だった!」

「そっかそっか」

「うん。やっぱ、しおくんに頼もっかな~」

「いんでないかい?」

「そうだよね」


 シャープペンシルをギュッと握りしめ、しょうゆはバッと両腕を広げた。


「う~・・・、ん~・・・。肩痛~い」

「お疲れ」


 ポフポフとみそはしょうゆの肩を叩いた。


「お客さん、結構凝ってますね~」


 冗談交じりにみそが言う。


「そうなんすよー」

「え?学生さんか何かで?」

「はい。一応、学生です」

「一応って。面白いですねー、お客さん」

「マジっすかー。あざーす」

「・・・なにやってんだろ」

「ね」


 妙な即興劇に、恥ずかしくなったのか、誰もいない教室で二人は顔を見合わせた。


「・・・この問題、しおくんに聞く?」

「いんでないかい」

「しおくん、どこいるかな?」

「探すの、こわいわー」


 『こわい』。北海道弁で、『だるい』。


「しょうがないよ」


 苦笑したしょうゆが言った途端。

 ガララッ

 教室のドアが開いた。