「ふぅ」


 顔を洗わせるために、そばはざるそばの腕を引っ張って洗面所へ連れて行き、その場にざるそばを置くと、次は冷麺の部屋へと向かった。

 洗面所での出来事に、もう何度目か知れない溜息を吐くそば。

 つい数分前のことだ。

 
「ほーら。顔洗って」

「んー・・・」


 蛇口をひねり、バシャバシャとざるそばは自分の顔に冷水をぶつけた。


「ふー」


 これで目が冴えただろうか。

 そばが苦笑を零すのとほぼ同時に、


「うがぁぁああっっ?!」


 ざるそばがなんとも言えない悲鳴を上げたのだ。


「えっ?!ど、どうしたの?!」


 慌ててそばが、真っ青になったざるそばに問う。


「ふ、ふ、ふふふふふっ、服!」

「服?服がどうかした?」

「ぜ、ぜぜっ、ぜんっごっ・・・、!!ぎゃっ、くぅ・・・?!」

「はぁ?」


 真っ青になったかと思うと、次は真っ赤になるざるそば。ころころと変わる表情とは逆に、その声はずっと一定のトーンを保ったままだ。焦りと、恥ずかしさと、羞恥と、羞恥と、羞恥にまみれた震えた声を。


「それにっ・・・!お、おおおおっ、帯もっ・・・!してなっ・・・!!」

「あー。はいはい」


 もうお手上げと言わんばかりのそばは、わたわたするざるそばを洗面所に置き、冷麺を起こしに行くのだった。


「ふぅ」


 まず一回目の溜息。