「ふむ・・・」
洗面所についたそばは、何かを考え込むようなフリをした。
「これはこれは・・・」
何かを言いかけた途端。
「あ。おはようございます、そばさん」
後ろから声をかけられた。
「あ。おはよう、そうめんくん。君、起きるの早いね」
「ええ。まぁ、いつも二人の朝食を作ってますし、それに、今日はなんだかドキドキして、寝つきが悪くて・・・」
こんな時間に会話をするのは初めてなそばは、動揺を隠せないままそうめんに話しかけた。困ったような、照れたような、そんな笑いを零したそうめんにつられて、そばも小さく口角を上げていた。
「うどんがいるから?うどんと同じひとつ屋根の下で寝てるから?」
いたずらっぽく微笑んだそばが質問攻めにすると、そうめんは真っ赤になって俯き、小さな声で反論した。
「ちょっ、何言ってるんですか・・・、もう・・・」
「なんか、おばさんみたくなってる」
クスクスと笑うと、そばは洗面所の鏡をもう一度見やった。
「・・・」
「?どうされました?」
「ん?ああ、いや。なんでもないよ」
真剣に鏡の中の自分を見つめるそばに不信感を抱いたのか、そうめんが怪訝そうに訊くと、クルリとそうめんの方に向き直ったそばは、作り笑顔で誤魔化した。
「?」
頭の上に疑問符をたくさんつけたままのそうめんを置いて、そばが
「さて。朝ごはんの支度しなくちゃね」
台所へ向かった。


