嗚呼っ、美しきイケ麺’sよ!


「んぅ~・・・・・・、っっ、はぁ・・・」


 現在の時刻は午前五時三十分。

 大きく伸びをしたそばは、置時計に目をやった。


「うん。いつも通りだね」

 
 数秒の狂いはあるものの、いつもこの時間に目覚ましをセットしなくても起きられる体になったそば。


「う~ん・・・。ざるそばとうどんには『早くねっ?!』って言われたけど・・・。・・・朝、早く目覚めちゃうのって・・・、もしかして・・・、年とったから?・・・いやいや。ヤダなあ、そんなこと考えたくないや」


 自分で言ったことを、かき消すように苦笑いしながら頭を振ると、そばは立ち上がり、着流しから着物に着替えはじめた。

 着慣れているからか、ササッと着物を羽織り、左前にして帯をキュッっと結んだ。

 結んだ帯を、気合を入れるように、パンッと一回叩くと


「よし」


 真剣な表情を作った。と、思えば、にこりといつもの笑顔を作った。

 いつもなら鏡台を前にする、一連の動作で、鏡に映した自分の顔をまじまじと見つめると、


「今日は調子よくないかも」


 とか、


「あー、今日、悪いこと起きるなー」


 とか、


「む・・・。うどんが、何か悪いことを呼び込んでくる予感」


 等々、まぁ、基本良くないことばかりなのだが、今日の運勢的なことを言うのだが、ちなみにこの予感が外れたことはまずない、今日はそれができない。


「ま、いっか。・・・あ、洗面所に鏡あった気が」


 いつもの運勢占いをするため、誰も起きていないそうめん宅の長く続く廊下をヒタヒタと素足で歩き、洗面所に向かった。