「はぁ・・・。これでやっと落ち着いて眠れますね」
着流しに着替えたそうめんは、自室に戻ると、溜息を一つ吐いた。
パフッと枕に顔を埋めると、
「んん~・・・んぅ・・・」
すりすりと枕に顔を擦りつけはじめた。
「はぁっ」
しばらくそうしていた為、息ができなかったのかパッと枕から顔を離した。今度はあお向けになり、足元にあった掛け布団を足で自分側へ引くと、薄い掛け布団に潜った。
「いつもは二人きりなので、こんなに騒がしい一日を過ごしたのは久しぶりですよ」
呆れか、楽しさか。そのどちらともとれるそうめんの言い方には、少し哀しさが匂っていた。
「あと二日・・・、ですか」
二泊三日のそば・ざるそば・うどん滞在。
早くもその一日が過ぎてしまったのだ。
何事もなかったかのように過ぎる毎日に、刺激を与えてくれる三人には、いつも感謝をしている。
毎年この時期になると、二泊三日の三人滞在があるのだ。恒例行事のようなものだ。
いつも通り騒がしい蝉の声。いつも通りじゃない騒がしさの、主にうどんの、声。
「はぁ・・・。うどん、さん・・・」
これはいつも通りの溜息。
いつも通り想っていた彼の名を、今日は違う風に想って呼んでみた。
「・・・・・・フフッ」
少し、新鮮だった。
なぜだか、自然と笑みが零れていた。


