「うおっ?!」
「冷麺!さっきから何度も呼びましたよ!」
飛び起きた冷麺に、そうめんが静かに怒る。
「な、なんだよ・・・」
バツが悪そうに視線を逸らした冷麺にかけてあったタオルケットを剥がすと、それを畳みながらそうめんは続けた。
「風邪でもひいたりしたらどうするんですか。全く・・・。ちゃんと貴方の部屋があるんですから。そこで寝なさい。ほらちゃんと立って」
そうめんは、右手を畳についてそうめんを見上げている冷麺の、空いた左手を強引に掴むと、これまた強引に冷麺を立たせた。
「貴方、いつも布団蹴飛ばして寝ているでしょう?だから、コレ。使いなさい。タオルケットぐらい被って寝てないと、風邪ひきますよ」
「どのみち、おれ風邪ひくんじゃん」
「なにか言いましたか?はい。これも蹴飛ばして寝るんじゃありませんよ。それから、おへそも出して寝ないこと!いいですね」
キレイに畳まれたタオルケットを無理やり渡された冷麺は、それをジィッと見つめ、クシャッと胸に抱いた。
「・・・うるせ」
「はいはい。もう寝なさい」
「・・・おす」
微笑んだそうめんは、冷麺の頭をポンポンと撫でてやると、その背中をそっと押した。
冷麺は、押された背中に無意識に手を伸ばすと、条件的に踏み出した一歩を止めることなく歩き、少しだけ後ろを振り返った。
「・・・・・・おやすみ」
口の中で呟いた声は、そうめんに届いたのか否か。
ただ。
「おやすみ」
確かにそうめんの口からも、同じ言葉が漏れていた。


